AI 文字起こし

議事録を自動で作る:録音から承認可能な文字起こしまでの全工程

取締役会の議事録を 90 分かけて手書きする時代は終わり。録音を会社法 369 条に耐える文書へ8分で。出席・動議・採決・決議をAI 文字起こしで構造化。

結論から

議事録を自動で作る流れはシンプルです。会議を録音し、精度 98.7% の AI 文字起こしを通し、構造化プロンプトで「議事録に必須の 7 要素」(ヘッダー、出席状況、議題、動議、採決、決議、閉会時刻)へ写し替える。60 分の取締役会なら、ここまでで約 8 分。書記が手書きで仕上げる 90 分超とは、もはや別の作業です。

ただし、議事録は要約ではありません。ここを混同したまま運用している組織が、監査や訴訟で慌てて版を作り直す。本記事はその差を埋める話です。

編集部から

議事録は法的記録であって、まとめではありません ── これは細かい話に聞こえますが、そうではない。監査のとき、「賛成者の記載」が一行欠けるだけで決議が無効になり得るのです。だから本当の難所は文字起こし自体ではなく、その文字起こしをロバート議事規則 第 12 版が要求する構造化フィールド ── 動議・賛成者・賛否・棄権 ── に正確に落とし込めるかどうか。多くの AI ツールは前半で止まっています。

議事録・要約・文字起こし ── 別物として扱う

「議事録」という言葉は、現場ではかなり緩く使われがちです。でも企業、一般社団法人、行政、管理組合の文脈では意味が明確に決まっていて、監査人・規制当局・裁判所がその定義で見てきます。

文字起こしは、発言を一語一句書き起こしたもの。生の素材です。署名もなく、構造もない。法的拘束力はありません。

要約は、ふつう 3〜5 文で「何が話されたか」をまとめた読み物。社内同期ミーティングの後に共有するアレです。

議事録は、形式の決まった公式記録。誰が出席し、誰がどんな動議を出し、誰が賛成(seconder)し、各メンバーがどう投票したか(あるいは全会一致だったか)、何が決議されたか、何時に閉会したか ── これらを所定の順序で書き残します。日本の会社法第 369 条は取締役会の議事録について作成義務と署名・記名押印を定めていて、東証コーポレートガバナンス・コード補充原則 4-1③ も適切な議事録運用を求めています。一般社団法人法第 95 条も理事会議事録について同様です。公益法人なら所轄庁への事業報告書要件もあり、「会議の都度、合理的な期間内に作成された記録」が求められる ── 半年後に記憶を頼りに再構成したものは、ここで通用しません。

ロバート議事規則 新版第 12 版(700 ページ超の議事運営標準で、米国の非営利法人理事会の推定 85% が採用)はさらに細かい。個人的意見は書かない。演説も書かない。「行われたこと」を書く

自由形式のサマリを「議事録」と呼んできた組織は、別に珍しくありません。ただ、何も守ってくれないのは事実です。

議事録に欠かせない 7 要素

ロバート議事規則に倣うのか、定款のひな型に従うのか、所属業界の慣例に合わせるのか ── 何を採用しても、骨組みはほぼ同じです。どれか 1 つでも欠けると、監査で文書の信頼性が落ちます。

7
必須要素:ヘッダー/出席/議題/動議/採決/決議/閉会
8 分
60 分会議の AI ワークフロー所要時間(手書きの 90 分超に対して)
98.7%
クリーン音声における Atter AI の文字起こし精度 ── すべての土台
90+
対応言語数。多言語が混在する国際取締役会にも対応

順番に並べると、こうなります。

  1. ヘッダー ── 組織名、会議の種別(定例・臨時・年次)、日付、時刻、場所(または使用したオンライン会議ツール)。
  2. 出席状況と定足数 ── 出席者、欠席者(事前通知の有無を付記)、定足数を満たしている旨の明記。
  3. 前回議事録の承認 ── 修正の有無を含めた承認結果。
  4. 議題ごとの審議内容 ── 取り上げた順に、提示された内容を 2〜3 文で事実だけ記録。
  5. 動議と採決 ── 動議の原文、提案者、賛成者(seconder)、賛否・棄権の集計、可決/否決の結果。
  6. 決議事項と実行項目 ── 機関として何を決めたか、担当者と期限。
  7. 閉会時刻、次回開催、署名 ── 終了時刻、次回予定、書記名(承認時に署名を追加)。

正直に言うと、世の中の AI ツールは 1・4・6 だけは綺麗に出すのに、2・3・5・7 を黙ってスキップする ── そして組織がトラブルに巻き込まれるのは、まさにそこです。

ワークフロー全体を初めて触る方は、まずAI 会議文字起こしの入門で録音・アップロードの基本を押さえてから、本記事の議事録レイヤーを重ねてください。

ステップ 1 ── 議題に耐える音声を録る

取締役会の音声は、チームの朝会よりも明らかに難しい。理由は 3 つ。話者が多い。固有名詞が多い。数字が多い。「2027 年度の設備投資予算 2.4 億円を、第 3 四半期の資金調達 4,800 万円達成を条件に承認することを動議します」── この 1 文に数字が 4 つと略語が 1 つ。どれもひとつでも誤れば議事録は崩れます。

ここで効くのは 3 つだけです。

  • 議長と書記のマイクを最優先で確保する。手続き上の発言(「動議します」「賛成」「全員賛成の方は」)は、この 2 人に集中します。ここの音さえ綺麗なら、動議の抽出はほぼ完璧。
  • プラットフォーム純正のローカル録音を使う。Zoom の「このコンピュータに記録」、Teams の SharePoint 録画、Webex のローカルキャプチャは、机の真ん中に置いたスマホより 4〜6 倍クリア。Zoom を多用する方は Zoom 議事録の文字起こし手順も参考に。
  • 冒頭で出席を読み上げる。30 秒の点呼で、AI に各メンバーの「声紋ラベル」が渡る。9 名の理事会で、点呼なしの話者識別精度は約 78% ですが、点呼ありで 94% 超まで上がります。

Atter AI は録音時間に上限がないので、3 時間の年次総会もファイルを分割せずに 1 本で処理できます。動議が分割ファイルの境目で千切れる、というあの事故が起きません。

ステップ 2 ── 抽出より先に文字起こし

議事録プロンプトは、クリーンな文字起こしの上でしか機能しません。議事録用途で特に効いてくる文字起こしの性質は 3 つ。

  • 数字と金額の精度 ── 予算数字で動議の意味が変わるため。
  • 話者ラベル ── これがないと、提案者・賛成者をクレジットできない。
  • 10〜20 秒ごとのタイムスタンプ ── 後日「ここの記述は違うのでは」と異議が出たとき、原音にワンクリックで戻れるため。

Atter AI はこれら 3 つを 98.7% の精度で標準提供します。録音から文字起こしまでの基本手順はこちらの記事で押さえつつ、その上に議事録レイヤーを重ねていく ── そんな順序で考えてください。

ステップ 3 ── 議事録生成プロンプトを走らせる

文字起こしを「ロバート議事規則の形」をした議事録に変換するプロンプトがこれです。AI チャットに、文字起こしと一緒に貼り付けてください。

この文字起こしから、ロバート議事規則(および会社法第 369 条が想定する取締役会議事録の形式)に従って公式議事録を作成してください。次の構造で出力すること:

1. ヘッダー:組織名、会議種別、日付、時刻、場所/使用プラットフォーム。
2. 出席:出席者、欠席者(「事前通知あり」と発言された場合は付記)、ゲスト、定足数の充足。
3. 開会:時刻と議長名。
4. 前回議事録の承認:承認内容と修正の有無。本日の議事に無ければ「本会では議題に含まれず」と記載。
5. 各議題:見出しと、提示内容を 2〜3 文の事実描写(意見・演説は不可)。
6. 各動議:原文ママの動議本文、提案者、賛成者、採決結果(賛成/反対/棄権)、可決/否決。
7. 決議事項と実行項目:担当者、内容、期限。
8. 閉会時刻と次回開催日。
9. 署名欄:「謹んで記録する 書記 [氏名]」。

ルール:三人称・過去形で記述。動議の文言は言い換えず原文ママで引用。不明瞭な箇所は「[要確認 ── タイムスタンプ HH:MM:SS]」と明記。決議内容を超えた議論の要約は書かない。

このプロンプトが汎用要約プロンプトと違うところは、3 点あります。

  • 動議の言い換えを禁じている。動議の文言は法的に効力を持つ。「上限 5,000 万円までの執行を承認する」と「5,000 万円の支出を承認」は別物です。
  • 「不明瞭」マーカーを必ず残すよう求めている。監査人は「分からない部分を分からないと書いてある文書」を、「不明点を覆い隠した文書」より信頼します。タイムスタンプがあれば、10 秒で原音に戻れる。
  • 議論内容の要約を禁じている。ロバート議事規則は明確に「議事録は『行われたこと』を記録するもので、『話されたこと』を記録するものではない」と書いています。議論サマリは別文書の仕事。

ステップ 4 ── 自組織のガバナンス基準で整形

プロンプトが出すのは構造化された散文です。次にやるのは、自組織が実際に従う基準への整形。多くの組織は、ざっくり以下の 3 つのどれかに当てはまります。

組織タイプ 準拠基準 注意点
日本の株式会社(取締役会) 会社法 369 条+ CG コード 4-1③ 出席役員の署名・記名押印。書面決議は全員同意が必要
一般社団法人・公益法人 一般社団法人法 95 条+公益法人会計基準 所轄庁への事業報告書要件。理事報酬の議論は別記録
マンション管理組合 区分所有法+管理規約 区分所有者の出席記録、修繕積立金関連は項目立て
行政機関・審議会 情報公開法+各自治体情報公開条例 公開期限(7〜14 日が多い)。パブリックコメントは別記録

定款やひな型でテンプレが指定されている組織なら、そちらを優先してください。上記プロンプトは「ほとんどのテンプレが要求する項目のスーパーセット」を生成するので、フィールドを足すより削るほうがずっと楽です。

ステップ 5 ── 配付・修正・承認

議事録は「次回会議で機関が承認」して初めて確定します。この承認ループを早回しするコツが 3 つ。

  • 72 時間以内に配付。「合理的な期間内」とよく言いますが、実務的な目安は 72 時間。これ以上引き伸ばすと、出席者の記憶が曖昧になって修正要望が増え、結局承認が遅れる。
  • 編集可能ファイルではなく PDF で送る。Word ファイルで送ると行単位の編集が無限に飛んできて「v3_最終_本当の最終.docx」が生まれる。PDF+「修正点はメールで」のシンプル運用にするだけで、版管理が一気に整理されます。
  • 修正は別レコードで管理。次回会議で議事録への修正動議が出たら、元の版と修正後の版の両方を残します。元ファイルの上書き保存は禁物。

公式議事録とは別に「読みやすい役員向けエグゼクティブサマリ」も欲しい場合は、5 つの会議サマリテンプレートが組み合わせやすい。記録は議事録、配付は要約、と棲み分けるのが現実的です。

よくある落とし穴

落とし穴 1:録音の事前告知をしていない。会議の録音には、参加者への事前告知が現実的に必須。議長は開会時に録音開始を宣言し、その宣言自体を議事録にも残してください。プライバシー法制の運用次第では、無断録音が後で問題化します。

落とし穴 2:議論を要約してしまう。新任書記がやりがちです。やめましょう。会議の振り返り風に書かれた議事録は、訴訟のディスカバリー(開示手続)で精査の対象になりやすい ── 「個人の意見」が証拠化するからです。**「決まったことだけ」**に絞る。

落とし穴 3:動議の発言者を誤帰属する。3 人以上の役員に声が似ている人がいるとき、あるいは採決で発言が重なるとき、AI の誤帰属率は 10〜15 ポイント跳ねます。対策は、重要な動議だけ口頭点呼で採決すること。少し遅くなりますが、話者識別の信頼度はほぼ完璧になります。

落とし穴 4:「全会一致」をデフォルトにする。欠席が 2 名いる場合、その動議は「全会一致で可決」ではなく「賛成 7、反対 0、欠席 2 で可決」です。ロバート議事規則も、日本の会社法解釈もこの点は厳密。議事録も厳密に書く。

落とし穴 5:本来「別紙」にすべき資料を本文に貼る。財務報告書が 4 ページあるなら、別紙として添付し、本文では「別紙 A:2026 年第 1 四半期 経理報告」と参照するだけ。本文に丸貼りすると、議事録自体の可読性が壊れます。

多言語が混ざる会議では

国際 NPO や合弁会社の取締役会は、英語と他言語が混在することがよくあります。Atter AI は 90 以上の言語をまたぐ会議に対応し、最終議事録を統治文書が要求する言語で出力可能。動議に限っては、原語のクオートを脚注として残すこともできます。

たとえば英語と日本語が混在する日米合弁の取締役会なら、議事録本文を日本語の公式記録として作りつつ、英語で発言された動議は「原文:I move to approve the FY26 capital budget of $2.4M」と脚注で残す ── こうすると、日本側の会社法 369 条要件と、米国側親会社の Delaware GCL §141 系の記録要件、両方を 1 つの文書で満たせます。

実行項目の抽出をメインで運用している方は、AI でアクションアイテムを抽出する方法に、議事録プロンプトとペアで使える抽出プロンプトをまとめています。

FAQ

AI が生成した議事録に法的効力はありますか

あります。議事録の法的有効性は、正確性・構造・機関による承認の有無で決まります。誰が(あるいは何が)下書きしたかは無関係。タイプライターや Word が下書きツールとして使われるのと同じ位置づけです。書記は配付前の正確性確認の責任を負い、機関は次回会議での承認責任を負う ── ここは AI でも人手でも変わりません。

AI 議事録は会議要約とどう違いますか

要約は 3〜5 文の物語的な振り返り。議事録は、出席・動議・採決・決議を定められた順序で記載する構造化された法的記録です。多くの組織は両方必要 ── 記録としての議事録と、配付用の要約、別物として運用してください。

秘密会議(エグゼクティブセッション)はどう扱いますか

エグゼクティブセッションの内容は文字起こしせず、通常の議事録にも載せません。実務パターンとしては、議長が秘密会議の開始を宣言した時点で録音を止め、公開セッション復帰時に録音を再開し、議事録には「HH:MM に秘密会議へ移行し、[許可された議題] を議論、HH:MM に復帰」とだけ残す。Atter AI はアップロード録音をモデル学習に使用しないので、日常の取締役会の内容もアカウント内に閉じたままです。

動議の文言に対する AI の精度はどの程度ですか

クリーンな音声でハッキリ発音された動議(「執行役員に対し、東通り物件のリース契約に最長 5 年で署名する権限を付与する旨を動議します」)であれば、原文ママの文字起こし精度は 97% を超えます。残り 3% の誤りも、固有名詞(地名、取引先名)に集中する傾向があり ── 動議の動詞を聞き間違えるよりは、書記が捕まえて修正しやすいタイプのエラーです。

AI は動議と議論コメントを区別できますか

ほとんどのケースで可能です。役員は予測可能な定型句(「動議します」「賛成します」「修正動議として……」)を使うので、上記の議事録プロンプトはそのパターンを拾うようにチューニング済み。例外(委員会での非公式動議や、「動議します」の枕詞を省いた発言)は時々取りこぼすため、書記による検証パスは必要です。

ワークフロー全体は実際どれくらいで終わりますか

60 分会議の場合:アップロード(1〜2 分)、文字起こし完成(音声が綺麗なら 5 分以内)、議事録プロンプト実行(10 秒)、書記による動議・出席の検証パス(3〜5 分)、PDF 化と配付(1〜2 分)。合計、書記の稼働時間は約 8 分。同じ人が手書きしていた 90 分と比べれば一目瞭然です。3 時間の年次総会のような長尺会議ほど、削減比率は大きくなります。

自社独自のテンプレを使っている場合は

AI が出力した議事録をテンプレ構造にコピーするだけです。プロンプトはロバート議事規則の標準フィールドを全部出すので、自社テンプレが「サブセット」なら不要フィールドを削るだけ、「追加要件あり」なら追加プロンプト(例:「あわせて、会議中に開示された利益相反を一覧化してください」)を 1 回投げる。Atter AI の AI チャットなら、録音を再アップロードせずにプロンプトを微調整できます。

録音は AI モデルの学習に使われますか

いいえ。Atter AI はアップロード録音をモデル学習に使用しません。録音はアカウントに閉じた状態で保持されます。個人情報保護法、GDPR、業界固有のデータ保管要件の対象となる会議については、アップロード前に自組織のデータ分類レビューを通してください。これは譲れないラインだと思います。

書記業務に Atter AI を使う場合のコストは

週 6.99 ドル、年 49.99 ドル、または買い切り 129.99 ドル。クレジットカード不要の 3 日間無料トライアル付き。分単位の従量課金はありません。月 1 回の 2 時間定例+年 1 回の 4 時間定時総会、という運用でも、毎週 2 時間ミーティングを開く運用でも、同じ料金 ── 長尺会議が定期的に発生する書記業務こそ、定額制の旨味が一番効きます。

会議の要約パターン全般を見直したい方には、会議録音を AI で要約する方法も合わせてどうぞ。記録と要約、両輪で回すのが現実的な落とし所です。